竜宮城-常世の国
小さな頃から川や海での遊びが好きだった。
親に釣りに連れて行ってもらうことが何より好きだった。
幼稚園の頃には、一日中、小さな川でザリガニや魚を捕って遊んだ。
海水浴に行けば誰よりも遅くまで残り、水に親しんだ。
僕にとって生命のある水は何よりも生活だった。
仕事を辞めてぶらぶらしている時、よく海を見に行った。
伊根町の海。
港の周りをゆっくりと車で周ると細い道が続く。
海の音を聞きながら車を流した。
釣りができる小さな港があった。
僕は、車を停めて港の最も海に近いあたりで腰を降ろした。
規則的で穏やかな波の音が心地よい。
波で揺れる船がギコギコと鳴っている。
ウミネコかカモメか、海に行くと必ず聴くこの鳥の声に懐かしさを感じた。
潮の匂いが体を包む。
僕はしばらく海を眺めた。
そのうち歓声が聞こえてきた。
どうやら釣り人が何かを釣り上げたらしい。
ぼうっと海を眺める。
海の向こうに何かが見える気がして。