龍に導かれて
大阪と奈良の境に位置する石切神社。
何度となく訪れた場所である。
いつも何かに惹かれた訳でもなく、誰かに誘われた訳でもなく、無意識に「行こう」という気持ちが沸き起こり思い立ったように行く。
そのうちの一回、石切神社の周辺に点在する占い師に診てもらったことがある。
占いに対して信じるか信じないかという信念などなく、単純に興味が無かったので、これまで一度も診てもらったことがなかった。
なのに、どうしてこの時は診てもらうことになったのか、自分では説明がつかない。
何となく、としか言いようがない。
そして診てもらった内容だが、過去のことを悉く当てられて心底驚いた。
中でも驚いたのが、「あなたは過去に一度だけ何をやっても上手く時期がなかったか」というものだった。
あまりにも驚いたので、僕は「さぁどうだか」と適当にはぐらかしてしまった。
まさに龍の夢を見たあの年のことだ。
その他にも色々と言われたのだが覚えていない。
ただ、この事実が僕の心に残っている。
「何か色々と上手くいったことがあるな」ぐらいに自分の中で認識していたものが、占い師の指摘によって、外観的にも「上手くいった時期がある」という事実として僕の中で確立された出来事として、非常に大きな意味を持っていた。
そうだ、この時から僕は龍の存在が輪郭を持って立ち現れてきたのだ。
しかし、僕はその後何年も、このことについて深く考えることは無かった。
ただ、僕の中で芽生えたビジョンは次第に大きくなっていった。
なぜ、僕は龍と出会ったのか、そしてなぜ石切に行くことになったのか(今では呼ばれたと思えるようになった)、過去のあらゆる事象が実は線になって繋がっているのだと、意識するようになった切っ掛けはここなのかも知れない。