目と眼
不思議な力が宿った。
周りの物、風景、社会、家庭、草木、アスファルト……
声にならない声が聞こえる、感じられるようになった。
町を歩いていて、耳を澄ませば、鼻を研ぎ澄ませば、何かが感じられる。
愉快な空気、ピリッとした鋭さ、生きている匂い、ぞわっとくる何か。
チャンネルを開けば、色々なことを感じることができる。
しかし、体がついていかないのか、そうした力を使うと、頭痛がひどくなる。
元々、頭痛持ちだが、頭が割れるように痛くなる。
ひどいときは三日間ほど続くこともある。
僕の半分は違う世界にいる。
鏡を見ると死者の顔をしている自分を見ることもある。
その代わり、以前には見ることができなかった世界を見られるようになった。